平穏な日常からハードボイルドな非日常へ 真・女神転生 デビルサマナー

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真・女神転生 デビルサマナー
発売日:1995年12月25日 ハード:SEGA SATURN

※本文にネタバレを含みます。未プレイの方はご注意ください。

90年代中盤頃まで、国産の三大RPGと言えばドラクエ、FF、メガテンでした。ドラクエ、FFが共に中世ヨーロッパ風の世界観であったのに対し、メガテンは現代/近未来の東京を舞台に、銃やボディーアーマーを身に付け、コンピューターを駆使するサイバーパンク的な異色の世界観を持っていました。

真・女神転生1、2の2作で大局的な物語を展開した後に、局地的なエピソードを描いた同if…に続き、この作品では横浜をモデルにした架空の街、平崎市が舞台になっています。

この作品、とにかく導入部が上手い。ゲームをスタートすると、まずDDS-NETと呼ばれるパソコン通信の会員情報登録画面になり、プレイヤー名を自然に入力できる演出になっています。また、次世代機によって実現したCGムービーを最小限かつ効果的に使ってプレイヤーをこの世界へ引き込みます。

主人公はワガママな恋人に付き合い、清潔で平和な平崎市をあちこち巡ります。やがて、あるビルに一人で訪れた主人公は見たことも無い怪物に遭遇、その危機を白いスーツを身にまとった謎の男に救われます。彼は表向きは私立探偵、裏では悪魔を使役し、悪魔退治を行うデビルサマナーでした。

こうした、日常から非日常への表現が巧みで引き込まれます。あるレビュアーの言葉を借りると「白昼夢を見ているような」体験ができます。

辛くも生き延びた主人公は、TVで先程別れたばかりの私立探偵の死亡ニュースを目にします。さらに、今度は主人公自身が人違いで殺されてしまいます。黄泉の国で三途の川を渡ろうとすると、川の主カロンから未だ死ぬ運命ではないが、元の体には戻れないため代わりの体に魂を移されます。死体安置室で目覚める主人公。その肉体はあの私立探偵、葛の葉キョウジでした。プレイヤーが演じる主人公が、さらに別人を演じる事になるという、二重のロールプレイ構造になっています。

ここから、平和だと思っていた平崎市の裏の顔が見えてきます。アーケード街の様々な店は、裏ではデビルサマナーに対して魔法の力がある薬や道具を扱っていました。不動産屋では銃器が売られ、ホテルの地下では悪魔同士を合体させる怪しげな秘術が行われています。

また、「魂は自分自身でも肉体は他人」という演出が随処に施され、クラブでは踊り方を忘れたのかと冷やかされます。病院では意識不明で寝たきりの息子を看病する両親に辛くあたられます。ハードボイルドです。

占い師の女から悪魔退治の斡旋を受け、図書館やマンション、大学、病院、など見慣れた日常の風景に現れた悪魔を退治してく主人公。しかも、表向きは私立探偵として。このシチュエーション、たまりません。

現代を舞台にした従来の女神転生の世界観に、「探偵」「他人の肉体」の要素をミックスした、最高にカッコイイ作品になっています。個人的にグラフィックの実写的/CG的/アニメ的画風のバランスもシリーズ最高だと思います。

この作品の攻略本もお気に入りで、「公式ガイドブック・ファイナル」の平崎市レポートがいい味です。実写を加工して再現した平崎市の風景と、シリーズ各作品の主人公として時空を旅してきたような文章に想像力を刺激されました。

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