シリーズ最高傑作 メタルギアソリッド3

PlayStation2

METAL GEAR SOLID 3 / メタルギアソリッド3
発売日:2004年12月16日 ハード:PlayStation2

※本文にネタバレを含みます。未プレイの方はご注意ください。

前作MGS2の不満点をいくつか上げると、主人公がスネークではない、ボス戦が少ない、ステージが代わり映えしない、といったところでしょうか。今作MGS3では、それらの不満点が完全に解消されています。

主人公はスネーク。しかし、ソリッド・スネークではなく、クローン人間である彼のオリジナル、BIG BOSSの若かりし頃が描かれています。外見や声は同じってわけですね。

ボス戦には個性的なコブラ部隊やオセロット、ヴォルギン、シャゴホッド、そしてザ・ボスと盛りだくさん。その間にも山猫部隊戦やバイクチェイスなどが挟まれ、豊富なイベント戦も楽しめます。ステージには、森林や沼、洞窟、山岳地帯といった自然環境に加え、基地や研究施設といった人工施設も用意されています。

海外ゲームサイトIGNが選んだ「ゲームで最も記憶に残ってる瞬間TOP100」15位にランクインしているのがコブラ部隊の老兵ジ・エンド戦。広大な森の中での狙撃戦です。静かに森にとけ込み相手のスコープの反射光から位置を探り狙撃する、というのが正攻法ですが、それ以外にも多様な攻略法があります。指向性マイクで音を探る、赤外線ゴーグルで足跡を辿る、そうすると相手の後ろを取ることもできます。また、セーブ後1週間経ってからロードすると老衰で死んでいたり、それ以前に初登場シーンで狙撃できたりとネタの宝庫です。また、ザ・ソロー戦では恒例のメタ要素が待っています。

今作のテーマはジャングルでのステルス+サバイバル。新しくカムフラージュの概念が登場し、迷彩服を着替えることで周囲に溶け込み、敵の視界内に居ても気付かれにくくなります(前作にあったBDUへの変装が発展したもので、変装要素自体も残っています)。また、「フード」「キュア」といったシステムも加わり、動植物を狩ることで食料を手に入れてスタミナを回復、傷や骨折を手当てします。

これらのシステムはスタートボタンを押してメニュー画面に切り替えて利用します。さらに今作では装備品が大幅に増えた事からバックパックへ取捨選択する必要もあり、前2作での「画面切替なしに装備を変更できる」テンポの良さが損なわれてしまっています。傷だらけのスネークの姿に見惚れたり、ともに行動するキャラクターの食歴や豊胸手術歴なんかを見られる面白さもあるのですが、ゲームシステムに贅肉がつき始めた感があります。

あいかわらずデモシーンは長く、スローモーションを多用する演出は、CQCの「目にも留まらぬ早さ」が実感しにくくもありました。ストーリーはMGSシリーズらしいどんでん返しはありつつも、前作程複雑過ぎない構成になっています。終盤のプレイヤーに引き金を引かせる演出には悩まされました。ステージ構成はバリエーションやボリューム、ゲームとしての楽しさを意識した作りになっていて前作からの反省が伺えます。膨大な無線会話は特筆ものです。

物語では前2作に登場するオセロットの過去も描かれます。彼の決め台詞や、リボルバー使い、拷問マニア、といった由来が全てBIG BOSSにあるというのが凄い。どんだけ彼が好きで、影響されているんだか。さらに彼の父親が霊媒師のザ・ソローということで移植した腕からリキッドに精神を乗っ取られることの辻褄があうようになるあたりが上手い。

スナッチャーのランダム・ハジル、ポリスノーツのトニー・レッドウッド、MGS1のグレイ・フォックスと、小島作品における主人公のライバルポジションにあたるキャラクターは故塩沢兼人氏が演じてきました(MGS2では同氏をイメージしてヴァンプをバイセクシャルに設定したそうです)。今作ではその役を声質が似ている山崎たくみ氏が引き継ぎ、往年の小島作品スタイルが復活。ラスト、WIGに乗り込んでスネークとの闘いを終えた後の去り際の言葉「楽しかった」を聞いて「ああ、彼が演じてくれて良かった」と思いました。同氏はバンドデシネ版にも出演しています。

リアルタイムでプレイした衝撃度も含めて筆者のシリーズベストはMGS1ですが、総合的な完成度ではMGS3がシリーズ最高だと思います。ただ、今回は前作までにあったソリトンレーダーが時代背景から廃止されたことで、基本の俯瞰視点がかなり不自由に感じます。完全版の「サブシスタンス」ではフリーカメラが採用され、以降のベスト版もそちらのバージョンになっていますが、無印のMGS3の段階でフリーカメラを採用して欲しかったですね。

PlayStation2