MGSVの異母弟かつ正統的な小島監督作品 デス・ストランディング

PlayStation4

DEATH STRANDING / デス・ストランディング
発売日:2019年11月8日 ハード:PlayStation4

※ストーリークリア直後のレビューです。※ネタバレを含むため未プレイの方はご注意ください。

MGSV発売後に独立した小島秀夫氏。失ったFOXエンジンの代わりを求めて各国のゲームスタジオを訪ね、オランダのゲリラゲームズにてNDA(秘密保持契約)を結ぶ前にソースコードを渡されたという心意気と技術に同社製「DECIMAエンジン」を採用。

新エンジンで作り上げられた本作デス・ストランディング(以下DS)をプレイして感じたのは、MGSVの遺伝子。ミッション制のオープンワールド、主人公サムの操作感、武器装備や車両の使用方法、資源集めと開発、メニュー周りのシステム、長短各種のカットシーン等々、FOXエンジン上で構築したMGSVのシステムをDECIMAエンジンで再現し、その上で新たな物語や舞台を用意した、という印象を受けました。例えるならMGSVの異母弟

そして、父親に相当するのが物語のテーマと密接に絡んだゲームデザイン、20年近くMGSシリーズで培ってきたスニーキングや戦闘(格闘/射撃/投擲など)、サポートメンバーとの無線会話や緻密な世界観設定といった要素で、プレイすると期待通りの正統的な小島監督作品「A HIDEO KOJIMA GAME」だと感じられます。

とは言うものの、最初は少し戸惑いました。PVで事前に知っていたものの独特な世界観・固有名詞とゲームシステムの情報量の多さについていけないまま、最初の数ミッションは美しい景色の中で登山するだけのゲームに感じられました。しかし、ゲームシステムに慣れ物語上で湖を超える辺りから、いつもの小島監督作品らしさと新しい楽しさが現れます。

オープンワールドゲームのミッションが「お使い」だと揶揄されることがありますが、DSはそのお使い/配達に焦点を当てたゲームです。

・配達の道中は崖や川、谷などが行方を阻む。
・梯子やロープでそれらの障害を乗り越える。
・荷物の重さや配置、地形の影響で姿勢が不安定になる。
・多機能センサー「オドラデグ」で地形の安全性を視覚化し、ルートを選んで移動する。

まず上記の要素が基本になります。そして、障害となる異形の怪物「BT」。筆者は序盤、BTと遭遇時に訳も分からず沼に引き込まれていたのですが、それも上記「オドラデグ」のセンサーで距離や方向を確認すれば確実に避けることができます。サムの肩に装備されているので、従来のゲームの様に画面隅のレーダーばかり注視することにもなりません。

そして、DSを象徴するソーシャル要素が加わります。DSはMMOではなく一人用ですが、

・自分が残した梯子やロープがオンラインで誰かの役に立ったり、逆に自分が助けられたりする。
・安全かつ効率的に配送できる、橋や国道建設をプレイヤー間で協力(資材投入)する。
・他プレイヤーからの役に立つ情報や設置物に対して「いいね」を送れる。

たどり着いた場所が険しい崖だった時、深い川を渡れずに右往左往している時、そんな時に誰かが設置した梯子や橋を見つけて使うと、ありがたさに思わず「いいね」を連打してしまいます。また、自分が設置した物が誰かの役に立つのを願わずにはいられません。

本作のテーマは「繋がり」。舞台となるのは、BTの出現とそれに伴う大爆発で崩壊し都市間や人々の繋がりが薄くなったアメリカ。プレイヤーは、アメリカ再建の為に東海岸から西海岸まで一人で配達をしながら各都市をネットワークで「繋いで」いきます。この繋がりは、装備品のロープ(ストランド)であったり、親子を繋ぐ臍帯(へその緒)であったり、人と人の間の思い、オンライン上のプレイヤー同士の関係性であったりするのです。

ゲームプレイにおいては、前述の湖を超えた辺りから配達に役立つ装備品が充実してきます。サムの脚力を強化する外骨格パワードスーツ、重量を分散して運べるフローター(ロープで「繋がる」)、高速移動できるバイクや車両、さらには急峻な地形を楽々飛び越えられるジップライン等々。序盤では逃げるしかなかったBTや、荷物を奪いに襲ってくる人間への対抗手段として、グレネードやハンドガン、ライフルといった殺傷/非殺傷武器も登場します。もちろん多勢に無勢なので、各種センサーやアイテムを頼りに「戦闘を避ける」ことも重要。

これらの武器装備や移動手段、地形の安全性等を考慮し、効率的かつ安全なルートを開拓していくのがこのデス・ストランディングのゲーム性です。補足すると、各拠点で現在の3Dプリンターの未来形のような「カイラルプリンター」を使い、様々な武器装備や車両を即席生産できるのですが、ガンガン作って広大なオープンワールドに設置したり移動したりして痕跡を残していくことで、プレイヤー同士でより豊かなゲーム性を与えることができます。

物語はシリアスですが、小島監督らしいお遊び要素も。プライベートルーム(MGSVでの空中指令室に相当)での鏡台等の様々なギミック。劇中に登場する平行宇宙論はオンライン上に無数にいる「サム」を暗喩し、大声を出すと他のサム(プレイヤー)からやまびこが返ってくることも。姿勢が乱れた際に両手でふんばる為に対応するL2/R2ボタンを押すことで、実際にリュックサックのベルトを両手で掴んでいるような感じにさせられたりもします。あるゲームシステムを使って状況を打破するメタ要素も。

終盤までは比較的カットシーンが少なく、要所では巨大ボスとの戦い、肉と肉とのぶつかり合いも有り!事件の黒幕の話が長いのもいつも通り。でも一度プレイしただけではおそらくストーリーは理解しきれません。Amazon等のネット通販の普及で宅配業者の激務が知られていますが、DSが配達をテーマにしたのは無関係でしょうか・・・。あとノーマンとマッツがひたすらカッコイイ!

MGSVとDSの共通点を多々書いてきましたが、ヴェノムと違ってサムは急斜面でもへっちゃらな男でした。

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